ビーントゥバーとは何か、工程を順番に解説する
「ビーントゥバー」という言葉を聞いたことはあっても、実際に何が違うのかよくわからないという方は多いと思います。スーパーで売っているチョコレートとどう違うのか、なぜ値段が高いのか。工房で毎日カカオ豆と向き合っている立場から、工程を順番に説明してみます。
1. カカオ豆の選定と輸入
ビーントゥバーの出発点は、カカオ豆そのものの選定です。大量生産のチョコレートメーカーは複数産地の豆をブレンドして均一な味を作りますが、ビーントゥバーでは特定の農園や地域の豆を単独で使うことが多いです。Daily Wren ではエクアドルとペルーの豆を使っており、それぞれ年に一度か二度、新しいロットが届きます。
豆が届いたらまず状態を確認します。カビや虫食い、発酵不足の豆が混じっていないかを手で選別します。この作業は地味ですが、後の工程に大きく影響します。
2. 焙煎
カカオ豆の焙煎は、コーヒーの焙煎と似ていますが、豆の大きさや水分量が違うため、温度と時間の管理が異なります。Daily Wren では小型のドラム式焙煎機を使い、ロットごとに温度プロファイルを手書きで記録しています。
焙煎が浅すぎると酸味が強く残り、深すぎると苦みが前に出すぎます。今年届いたエクアドルのロットは果実感が強かったため、昨年より3度低い温度で焙煎しています。
3. 粉砕とコンチング
焙煎した豆を割って薄皮(ハスク)を取り除き、カカオニブと呼ばれる状態にします。このニブをメランジャーという石臼式の機械で長時間かけて細かく砕きながら、砂糖と混ぜていきます。
この工程をコンチングといい、時間をかけるほど口溶けが滑らかになります。Daily Wren では最低48時間かけています。短縮すると粒感が残り、長すぎると風味が飛ぶため、ここも経験と記録の積み重ねです。
4. テンパリングと成形
コンチングが終わったチョコレートを型に流す前に、テンパリングという温度調整の工程があります。チョコレートを一度溶かし、特定の温度帯まで下げてから再び少し上げることで、カカオバターの結晶を安定した形に整えます。
テンパリングが正しくできていると、チョコレートは室温でパリッと割れ、表面に光沢が出ます。失敗するとブルームと呼ばれる白い斑点が出たり、口溶けが悪くなります。この工程は気温と湿度の影響を受けやすく、熊本の夏は特に難しいです。
工程を知ると、一枚の板チョコに込められた時間の長さが少し伝わるかと思います。工房の製造の様子が気になる方は、ワークショップでも実際に体験できます。